よく考えられた諮問機関は、注意すべき点を踏まえて運営されれば、取締役会にとって最も貴重な資産になりえる。
諮問委員会は、外部の専門家によって構成され、取締役会に助言や指針を提供する、非公式かつ独立した非法定の委員会だ。近年、その重要性と役割が広がり、活用が進んでいる。 諮問委員会は、取締役会委員会と意見交換会との間に位置づけられ、適切に組織されていれば、高度な専門性と独立した客観的視点を兼ね備えることができる。諮問委員会はアドバイザリー「ボード」と呼ばれるものの、公式な監査委員会、報酬委員会、リスク委員会などとは異なり、法令上の制約を受けない。オーストラリアの高齢者介護業界など一部の例外を除けば、その多くは規制の対象外に置かれている。
諮問委員会を設置する際、取締役会は、①目的、②プロセス、③人材の3点を、この順で検討する必要がある。まず目的については、ビジネスの世界そのものと同じく多様であり、最新テクノロジーに関する提言から人口動態変化による影響の考察まで多岐にわたるだろう。オジャーズはこれまで、さまざまな諮問委員会の設立を支援してきた。科学技術の商用化を探るグローバル製薬企業のCEOや、多忙な業務の合間に自由な発想で考える時間を必要としていた銀行のトップ、経営層に国際的な視座を与えたいと考えた日本の製造業企業などは、一例に過ぎない。そして現在、諮問委員会が担う役割は、さらなる広がりを見せている。Best Practice and Ethics Board 委員長のSandra Gambleは、「近年の顕著な動向として、消費者を巻き込む諮問機関が進展を見せている」と述べている。
諮問機関は、企業の前提に疑問を投げかけ、仮説を検証し、フィードバックを提供し、重要な人脈への橋渡しを行うことで、多大な価値を創出する。取締役会には、重要な戦略テーマを徹底的に議論するための専門知識やリソースが常に備わっているわけではない。 「政治、金融、貿易などの世界情勢を理解し、点と点を結びつけられるだけでなく、どの点が重要なのかを見極められる人材が求められています」と、スタンダードチャタードの会長として国際諮問委員会を設立したDr. José Viñalsは語る。
同氏によれば、議論のうち約9割は既存の見方を確認するものにとどまるかもしれない。しかし、残りの1割で新たな示唆が得られたり、課題の捉え方が変わったりすることこそが、最も価値ある貢献となる。たとえば、「世界が多国間主義から多軸連携へと移行しつつあるかもしれない」と気づくことで、CEOが新たな機会を見いだす助けになるのである。
諮問委員会が最も真価を発揮するのは、多面的かつ複雑で、繊細な判断を要する課題に取り組む局面だろう。フランスのある国営系エネルギー企業がブレグジット後の英国市場進出を図るにあたり、政治情勢、エネルギー政策、文化、メディア、多くの世論、新たな規制が複雑に絡み合う難しい状況を精査する必要があった。取締役会には「大局的で広範な視座と、各地域での政治的許容度への理解」が求められたと、同社の諮問委員会を統括したSir Mike Rake(長期にわたり多数の国際企業のCEO、会長、社外取締役を歴任)は述べている。
諮問委員会を誰のための組織として位置づけるのかという点は、しばしば議論を呼ぶ論点のひとつだ。従来は取締役会議長やCEOの補佐役と見なされてきたが、現在では経営陣全体やそれ以外の層からの理解と支持がますます重要になっている。諮問委員会は「ステークホルダーの声を汲み取り、意思決定プロセスに反映させるためのベストプラクティス 」になりうると、Advisory Board Centre創設者であるLouise Broekmanは考える。
世界情勢を理解し、点と点を結びつけられるだけでなく、どの点が重要なのかを見極められる人材が求められています。
諮問委員会の目的が定まったら、初期段階で明確なプロセスや運営ルールについて合意する必要がある。数多くの諮問委員会で活躍し、候補者のサーチも行ってきたオジャーズのBaroness Virginia Bottomleyによれば、「諮問委員会が単なるおしゃべりの場に終わってしまうリスクは常に存在する」という。こうした事態を回避するために、メンバーに定期的に論文や提案をまとめた報告書の提出を求めるのもひとつの方法だ。「報告書が確実に読まれるようにして、出席者がアイデアを持ち寄り、議論を活性化し積極的に関与することが期待される文化をつくることが重要です」と、リーズ大学ビジネススクール諮問委員会のメンバーだったDenise Collisも指摘している。
組み合わせから生まれる価値
もっとも、形式的なアウトプットだけでは、良好な信頼関係を築くことはできない。オンラインと終日の対面会議や夕食会を組み合わせることで、メンバー間に信頼関係が醸成され、実効性のある協働関係が育まれる。Dr. Viñalsは、そうすることで「各自が持論を展開するだけではなく、本質的で意味のある対話が生まれる」と語る。事実、設立から7年を経た彼の諮問委員会は「期待以上に機能しており、情報収集力が向上し、より自信を持って考えることができるようになった」という。
知的誠実さを備え、謙虚で、自らの考えを変えることを恐れない人々によってこそ、信頼に満ちた雰囲気は育まれます。
諮問委員会の成功のカギは適切な人材の組み合わせを見極めることにもある。「必要な役割に応じて人を選ぶべき」だとSir Mike Rakeは言う。同時に、連帯感を損なわずに多彩な経験を集める必要がある。通常、諮問委員会は5~8名のメンバーで構成されるが、彼らは、ビジネス、コンサルティング、学術または起業といった経験を持ち、かつ企業運営の難しさをよく理解していることが望ましい。 目的に応じて、技術者や科学者、ジャーナリスト、豊富な人脈がある政治家経験者を含めるケースもある。Dr. Viñalsは、地域、官と民、新興国と先進国市場の知見、ジェンダーの多様性を兼ね備えた構成を重視した。外部から利害関係を持たず、既成概念にとらわれない視点を得ることで、全く予想外の価値が生み出されることもあるのだ。
また、もうひとつ重要なバランスがある。選任された委員は、任命者であるCEOや取締役会から独立していなければならない。その一方で、組織と十分な繋がりを保ち、前向きな成果を望む姿勢を持っていなければならない。懸念されるのは、諮問委員会が「取り込まれやすい」点だ。ヘンリー・ビジネススクールのNada Kakabadseと故Andrew Kakabadseの両教授は、諮問委員会に対して向けられる次のような批判を紹介している。それによれば、諮問委員会は、協調性や自発的な助言を装いながら、結果としてCEOの視点を暗に後押ししてしまうことがある。その結果、CEOや取締役会議長の考え方が徐々に取締役会や経営陣全体の思考様式へと浸透していく危険があるという。
透明性は不可欠だ。メンバーは、プロセスにおける利害関係や企業との関係性について、一定範囲で申告する必要がある。そうした申告があったからといって直ちに不適格となるわけではないが、委員会への広範かつ長期的な信頼と支持を維持するうえで、重要な情報になる。
こうした緊張関係は、CEO、取締役会議長、あるいは外部専門家のいずれであれ、適切なリーダーがいれば、十分に管理可能だ。 まず留意すべきは、会議の進行スタイルが、いわば取締役会の会議運営とは異なる点である。諮問委員会の議論の場では探求的アプローチをとりながら、同時に、実践的かつ意図を持ったものでなければならない。リーダーには、最初はその議論の着地点が不明確であっても、追究する価値のある論点かどうかを見極める感覚が求められる。最終的なゴールとして、年数回の会議を通して展開された広範かつ自由闊達な議論を、実行可能なアクションやインサイト、または提言へとまとめあげる能力が求められる。
最後に、諮問委員会が十分に機能せず勢いが衰えているような場合には、いつ、そしてどのような形で終了させるのか、あるいは少なくともその位置づけを見直すのかを判断することが重要だ。期間を定めていない場合、CEOや取締役会議長が交代して優先事項が変わったり、新たなアドバイザーや新鮮な視点が求められたりするまで、委員会は長期にわたり形式的に助言を提供するだけで漫然と存続してしまう可能性がある。
諮問委員会を設置する際のアドバイス
- 存在意義を問う。 諮問委員会は本当に必要か。求められる助言の水準は、委員会に費やす時間やリソースに見合っているか。必要に応じて招集するタスクフォースや、単独の専門家で代替できないか。提案されている委員会は幅広い支持を得ているか。あるいは特定の個人や派閥、見解の利益に資するものではないのか。
- 職務範囲を明確に設定する。 職務記述書には、目標と成果物、時間的コミットメント、業務の進め方・場所・時期、提出文書、報酬に関する期待値を明記すべきである。定義が曖昧なままだと、役割が際限なく拡大し、不毛な議論や失望感につながりかねない。
- 報告体制について事前合意する。 諮問委員会は、過度な情報開示要求や、業績監視、厳格な期限に縛られるべきではない。一方で、進捗報告は必要な規律であり、その内容は明確に定義されたうえで、取締役会やステークホルダーに適切に共有されるべきである。取締役会は、諮問委員会がどのようなプロセスで結論に至ったのか、また異なる意見があったかどうかを把握したい場合もある。
- 諮問委員会委員長に求められる資質を明確にする。 委員長はメンバーが持ち寄る多様な知見を抽出し、実行可能な成果へと昇華させる能力、あるいは少なくとも十分に裏付けられた複数のシナリオを提示する力が求められる。場合によっては、実現可能性を割合で示すことも有効だろう。また、議論の方向性を見失うことなく、必要に応じて自由な対話を促す感覚も不可欠だ。平凡な結論を数多く積み重ねるよりも、たった一つの本質的な洞察の方が、はるかに価値を持つこともある。
- 大胆な人選を行う。 誰を何人諮問委員会に迎えるべきか、固定観念にとらわれず広く検討する。斬新な発想を引き出すことが目的ならば、従来の慣例に捉われない登用を実行する好機と言える。
- 必要なスキルと経験を見極める。 諮問委員会のメンバーは、解決すべき課題の本質を明確に言語化できなければならない。そのためには、テーマそのものへの理解に加え、企業の戦略目標に対する十分な理解が不可欠だ。
- 目的を見失わない。 諮問委員会は方向性を失いやすい側面がある。当初の役割を果たした場合、あるいは逆に議論を重ねても成果の兆しが見えない場合には、委員会を解散させる判断を躊躇すべきではない。ただし、その後には必ず正式なレビューを行い、成功点や課題から学びを得ることが重要だ。
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