2025年11月19日、オジャーズ駐日英国大使公邸において、経営者向けイベントを開催しました。イベントには、日本を代表する企業からCEOを含む約60名のトップ経営者が参加し、海外現地法人の経営課題について議論が交わされました。

成長の鍵は海外現地法人の価値向上
近年、海外現地法人の経営者交代、買収後の海外現地法人における経営チームの構築、日本本社の役割に関するオジャーズへの相談が急増しています。グローバルに事業を展開する日本企業にとって、海外市場は成長機会にあふれ、現地法人の事業価値向上は企業全体の成長を支える重要なドライバーです。一方で、日本本社による過度なガバナンス強化は、現地法人の自主性を損ない、攻めの経営を阻む可能性があります。
今回のイベントは、日本企業にとって海外直接投資における重要な戦略的パートナーである駐日英国大使館との共催により実施されました。英国は、多くの日本企業が欧州戦略の中核拠点を置く国でもあります。開会にあたり、ジュリア・ロングボトム駐日英国大使から、日英関係のさらなる発展と次世代リーダー育成への期待が語られました。
イベントのテーマは「海外現地法人の事業価値向上」。日本を代表するグローバル企業で経営の中枢を担ってきた4名の経営者が登壇し、現地法人の価値を高めるための視点や実践について、活発な議論が交わされました。
現地で競争に勝つには、現地人材による経営と権限移譲が必須
- 現地人材による経営を意識する。チーム構築時には、目先の要件だけではなく、将来の経営人材を見据えた採用を行う。
- 異なる文化、習慣の中で、日本人が適切な人材を見極めるのは困難。採用時には信頼できる現地の人やアドバイザーを確保し、現地視点で人材を評価する仕組みを取り入れる。
- 報酬は最もわかりやすい評価軸。海外ではモチベーションを左右する重要な要素であるという認識を持ち、報酬を曖昧にしない。
- 現地企業と戦い、成功するには、現地への権限委譲が不可欠。
- 各地域のCEOと頻繁に戦略を議論し、方針に合意した上で権限移譲することで、リスクは抑制できる。
現地経営陣との文化のアラインメントを徹底
- 文化をつくっていくことが最強のガバナンス。文化という土台の上で権限移譲する。
- 現地のCEO採用前には、候補者と時間をかけてじっくり語り合い、自社の企業文化を理解してもらう。分かり合えることが非常に重要。
文化で統べる。文化をつくっていくことが最強のガバナンス。
勝木 敦志
アサヒグループホールディングス株式会社 取締役 兼 代表執行役社長

(写真左:モデレーター | 経済キャスター・ビジネスジャーナリスト 瀧口 友里奈様)
「勉強目的」の駐在員派遣は、むしろ「足かせ」に
- 本社から派遣する人材は、現地企業に不足する要素を補完し、具体的な貢献を示す必要がある。
- 現地の経営陣と対峙する上で、駐在員には一定程度の権限が必要。
- 派遣された人材は、現地企業の一員であることを徹底し、必要とあらば本社とも対峙する覚悟を持つ。
- 本社と現地双方を理解する人材は、貴重な橋渡し役となる。
勉強のために駐在員を派遣することは受け入れられない。何の役に立つのか示す。ここに日本人の駐在員を受け入れる根本がある。
小野 直樹
三菱マテリアル株式会社 取締役会議長
現地の経営陣と対峙する上で、駐在員には、ある程度の権限が必要。これがあって初めて対等な会話ができる。
和田 知徳
住友商事株式会社 専務執行役員 国内担当役員 関西支社長(前米州総支配人)
常に後継者プールを確保し、経営交代の遅延を防ぐ
- 後継者プールがなければ、経営陣交代の検討は不可能。平時でも常に後継者プランを準備しておく。
グローバルに戦える人材の登用は、国内外の社内人材の把握から
- 経営陣は「多様性はグローバルビジネスの成功に不可欠である」という視点を維持する。
- 人材の見える化:世界中のどこにどのような人材がいるかまず把握する。グローバルなタレントマネジメントシステムを構築する。
多様性が重要だという考えを経営が持ち続ける。グローバルな会社を経営して行く上で、意図的に違う視点を持つ人間を配置することが非常に重要。
藤田 真理子
株式会社LIXIL 執行役専務 CFO
登壇者
- 小野 直樹(三菱マテリアル株式会社 取締役会議長)
- 勝木 敦志(アサヒグループホールディングス株式会社 取締役 兼 代表執行役社長 Group CEO)
- 藤田 真理子(株式会社LIXIL 執行役専務 CFO)
- 和田 知徳(住友商事株式会社 専務執行役員 国内担当役員)
- 【モデレーター】 瀧口 友里奈(経済キャスター・ビジネスジャーナリスト)
*五十音順・敬称略/2025年11月現在
パネルディスカッションにご登壇いただいた経営者の皆さまとモデレーターの瀧口様に心よりお礼を申し上げます。
オジャーズは今後も、重要な経営課題をテーマに、日本企業のトップ経営者向けイベントを開催してまいります。
海外現地法人の経営チーム構築やサクセッションプランについてさらに詳しく知りたい方は、 こちらの専用フォームからお問い合わせください。専任コンサルタントよりご連絡いたします。
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過去の英国大使館との共催イベント及びプログラム
2019年:「日本企業による海外企業買収」
2023年:「日本企業のインクルージョンとダイバーシティ」
2025年:「MUSUBIメンターシッププログラム」
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